“年収1億円になる人の習慣”の著者であり、実業家で元美容師の山下誠司さんを、四柱推命で解いてみます。
(1)日主の強弱を見る
日干支は「辛未」です。
辛は磨き上げられた宝石で、独自の美と繊細さを持ちます。命式の五行には変化を促す合がなく、月支は丑の後半で土が強く、埋金ではありません。他、日干を生じる土に囲まれています。しかし、この丑は日支の未と朋冲(同じ土の五行の冲)の関係になり、やや土が弱い。
冲にある未の蔵干(中気)に”丁”(ひのと)がありますが、これが冲去し、時柱を見なければ火が全くない命式です。日主を剋する火がなく、土が多い。冬の丑月生まれなので調候としては陽火(丙)が必要な命式で、全体的に水も少ないです。
日主の金は木を剋しますが、木が多すぎるために逆相剋と取れば、日主は身弱になりえますが、やはり日主の周りに土が多いため、やや身強とも取れます。ただ、土は冲で弱くなっていているため、時柱の五行がキーワードになりそうです。辛未は三業干支で見ると独身運で経済力が増します。
(2)通変星は偏印と偏財のみ
時干支抜きで、生剋は偏印と偏財の命式。人を好み、人を惹きつけますが、こだわりが強く個性的で、独自の美学を持つ偏印格。偏印は凶星とされていますが、この凶意は先ほどの朋沖によって中和され、偏財によっても制剋されるため、元々の良さが前に出やすくなります。
辛に土が固まっている型のため、日主やや身強とみると、官星や財星が喜神となります。
しかし、冲によって土がやや弱くなり、木が強勢で身弱と見ると官は忌神となるため、絶妙な所ですが、のちに大運で巡ってくる大運(丙戌)が巡った時から銀座店の店長に就任し、ご活躍が目立つようになった所を見ると、身中か身強(この運は火であり官です)。
この火は土の偏印を強めますが、制化(通変星での土と水の関係)があるため忌神が巡ってもそれほど問題はないのだと思える。(しかし、最終的には時柱を見なくてはいけません)
この時期は経営者として色々なトラブルに見舞われたそうですが、着実に成功を積み上げられていったという時期です。
(3)偏印格
偏印格は、非凡で独創性が強いですが、特にこの命式には制化の偏財がある事で、偏印を肯定しています。偏印の姿勢が良い方向に向いた結果、トップの美容師として君臨し続けた強みとなったのだと感じます。
コミュニケーションが苦手とおっしゃっていますが、これも、命式の中に食傷(話す星)がないためかもしれません。しかし近年は、月干支の干合(大運)によって、山下さんを取り巻く周囲の環境に変化があり、インターネットや講演会など、公の場などでお話しされる機会も増えています。(月干支は環境や立場を示す)
(4)用神
辛の人で、水が少なく、丑月生まれになるため、調候用神は丙と壬です。山下さんはインタビューの記事で、水の力を身に付けたいと仰っていました。水がない命式であるのと、また、山下さんは日干が辛なので、壬とは和用神の関係にもなります。辛と壬は母と子(正印)の関係であります。
(5)壬と辛の相性
壬(水)は、辛(金や宝石)の汚れを洗い流す。辛の姿をより美しいものにし、辛の輝きは、水を煌びやかに美しく見せるという意味があり、双方にとって良い影響を与え合うとされている。(淘洗珠玉の相性)
土は十分で、命式に足りない水を欲している事は、本当に勘が良い人だと感じます。算命学で見る伴星は石門星。「社長になりたかった」という言葉通り、組織の長として使命に生きていると見えます。
中国春秋時代の哲学者、老子は、「上善(じょうぜん)は水の若(ごと)し。水は善(よ)く万物を利して争わず、衆人の悪(にく)む所に処(お)る、故に道に幾(ちか)し」という一節を残しました。老子は、「上善(もっとも理想的な生き方)とは、水のようなもの」だと述べています。水には、相手に合わせて自分の姿を変える柔軟性があります。
そして、常に、低いところに流れ、低いところに身を置く謙虚さも持っています。大地に恵みを与え作物を育てたり、人々の喉を潤すおだやかな「癒し」の力を持つ一方で、ときに激しい流れとなって、岩をも砕く破壊力を持っている。柔軟性と、謙虚さと、癒しと、破壊力を兼ね備えた「水」のパワーを身に付けることができたら、スーパーヒーローになれる。私はそう思っています。
参考:子どものころに芽生えた「経営者」への憧れ