“年収1億円になる人の習慣”の著者であり、実業家で元美容師の山下誠司さんを、四柱推命で解いてみます。
性質の大部分を占める日干は陰金の“辛”(かのと)です。辛は磨き上げられた宝石で、独自の美と繊細さを持ちます。命式の五行には変化を促す合がなく、月支は丑で土が強いです。しかし、この丑は日支の未と朋冲(同じ土の五行の冲)の関係になります。
冲にある未の蔵干(中気)に”丁”(ひのと)がありますが、これが冲去し、時柱を見なければ火が全くない命式です。日主を剋する陰火がないですが、冬の丑月生まれなので調候として大きな陽火(丙)が必要な命式です。全体的に水も少ないですが、湿潤な土(己)が多いため、命式全体を暖める丙(ひのえ)が重要になります。
冲去を取る場合は卯が残り、冲去を取らずとも未と卯の半合が成立し、木が過度になります。日主の金は木を剋する側ですが、木が多すぎるために逆相剋と取れば、日主は身弱になりえますが、土が多いため、日主を生じると取れば、やや身強とも取れます。火が必要な命式ですが、のちに大運で巡ってくる二十年間に喜神(火)が巡った事が、ご活躍にも繋がったと言えます。
時干支抜きで、生剋(通変星)は、偏印と偏財の命式。年干支に偏財と、月干支と日干支に偏印です。人を惹きつけますが、こだわりが強く個性的です。仕事が趣味で年間の休みは殆ど無しという事です。
偏印格で独自な美学を持っています。偏印は凶星とされていますが、この凶意は先ほどの朋沖によって中和され、偏財によっても制剋されるため、元々の良さが前に出やすくなります。
(格局は、月支蔵干表を見て決定しますが、流派によって異なります。ここでは丑の己で偏印格と見ています。)
知性は水ですが、命式に水が少なくても、偏印が多数ある事で、好奇心が旺盛な人柄。様々な実体験を通して、学び成長する機会を得ます。実際、その通りになっていて、コロナ禍で経営が行き詰まる中でも、試行錯誤を繰り返しながら、経営難を乗り越える力強さを発揮されています。動乱の時を耐え抜く偏印の強さを感じます。
インタビューの中で「社長にどうしても成りたかった」と仰っていました。また、東方と西方が半合の命式で、仕事に関しても、結果がすぐ出るものを重要視するタイプです。同じく「学校で学んだ事はすぐには役に立たないが、仕事の知識や技術はすぐに役立てることができる。学校の世界には飛び級はないが、実社会では飛び級がザラにある。だから楽しくて仕方ない」とも仰っています。
美容師は社員であったとしても、職人であり、社内事業主みたいな感じだと思いますので、弱肉強食な世界である様子が窺えます。ここで見ても、偏印が三つある事が生きています。ちなみに、山下さんの上司である創業者の國分氏も偏印を持っています。また、命式の冲によって、用心深くなります。事前準備は非常にこだわるタイプで、成功するためには準備が9割とも仰っています。
繊細な手捌きや、表現力を司るため、美容師を初めとする技術職に推される”傷官”ですが、ここの命式にはありません。しかし、偏財がある事で、顧客に対して愛や奉仕精神を持つのと、偏印は探究力が強く、体験から貪欲に学びとろうとする姿勢と、独特の芸術性を持つ偏印が生きた結果、トップの美容師として君臨し続けたのではないでしょうか。
例に出した傷官は、表現や技術の星で、美容関係や芸術関係に推される事が多いですが、その分繊細であり、個性が強いため、内容によっては会社員よりも個人事業に向いている場合もあります。日主が弱く、傷官の感情の起伏が激しい命式になる場合は、大企業のリーダーは難しかったかもしれません。また、山下さんの日主は辛です。金の五行は、金属や宝石を意味するため、常にハサミを扱う美容師は、辛にとって身近なものになり易いと言えます。
コミュニケーションが苦手とおっしゃっていますが、これも、命式の中に食傷(伝達本能)がないためかもしれません(中気の癸を見れば食傷があるとも見れますが、意識して使用するのは簡単ではありません)。
身強の場合、用神は正官と偏官になりますが、実は大運空亡が15歳から34歳ごろまで巡っている時期は、まさに喜神と印を生じる官星が巡る二十年間でした。ここで年収が一億円に達するなど、大きく躍進されています。特に近年は、月干支の干合(大運)によって、山下さんを取り巻く周囲の環境に変化があり、インターネットや講演会など、公の場などで見られるようになったような感じでしょう。
辛の人で、水が少なく、丑月生まれになるため、先ほどの通り調候用神は丙と壬です。山下さんはインタビューの記事で、水の力を身に付けたいと仰っていました。また、山下さんは日干が辛ですので、壬とは和用神の関係にもなります。また、逆に水は金属の融解で発生するため、辛は壬にとって母であります。
また、これは淘洗珠玉(トウセンシュギョク)の相性にもなります。
壬(みずのえ)は、その名の通り大流の水を指し、辛(かのと)は金属を表します。壬は、金や宝石の汚れを洗い流し、辛の姿をより美しいものにし、辛の輝きは、水を煌びやかに美しく見せるという意味があり、双方にとって良い影響を与え合うとされています。
下記は山下さんのHPより引用。
中国春秋時代の哲学者、老子は、「上善(じょうぜん)は水の若(ごと)し。水は善(よ)く万物を利して争わず、衆人の悪(にく)む所に処(お)る、故に道に幾(ちか)し」という一節を残しました。老子は、「上善(もっとも理想的な生き方)とは、水のようなもの」だと述べています。水には、相手に合わせて自分の姿を変える柔軟性があります。
そして、常に、低いところに流れ、低いところに身を置く謙虚さも持っています。大地に恵みを与え作物を育てたり、人々の喉を潤すおだやかな「癒し」の力を持つ一方で、ときに激しい流れとなって、岩をも砕く破壊力を持っている。柔軟性と、謙虚さと、癒しと、破壊力を兼ね備えた「水」のパワーを身に付けることができたら、スーパーヒーローになれる。私はそう思っています。
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