
インド占星術を学んでいると、モクシャ(解放または、解脱)について書かれていることが多いが、それはこの占星術の歴史的背景も相まっている。
そして、解脱に関係するハウスやアスペクトなども散見されるが、その中でもモクシャ(解脱)に関係するハウスがあるようで、特に6ハウスと8ハウスと12ハウスがそれぞれ解脱に関係し、そしてケートゥも(西洋占星術ではドラゴンテイル)モクシャ(解放)を示す。
つまり、個人のクンダリ(ホロスコープ)で、これらのハウスやケートゥが印象的であったり、一定の配置が出ていると、解脱を示す事がある。解脱とは、輪廻転生を抜けて、魂がこの物質的な世界から解放されると共に、2度と生命として生まれ変わらないということ。
そもそもが、輪廻転生を信じるかどうかというのも、個々で違ってくる。しかし今回はそれを一旦置いておき、輪廻転生を抜け、解脱(解放)に近いチャートの特徴とは何かという事を書き留めていきます。
何せよ、ケートゥが強い関わりを持つということだから、ケートゥが、先ほどのモクシャハウスに在住しているか、これらのハウスの支配星と関係があるかどうかを見ていき、特に土星とも関係が深い場合は、解脱に近づくという事らしい。
しかし、モクシャハウスにケートゥを持つ人は少なくないはずで、同時にその支配星と関係のあるアスペクトを形成している場合も多いでしょう。最もよく書かれている内容は、ケートゥが12ハウスに在住し、月や木星と合しているか、もしくは土星と合しているか、1ハウスの支配星の合も言われている。
これは、12ハウスというのは1ハウスから最も遠く、誕生の地からもっとも離れており、11ハウス(利益や最終収穫)の次にある事から、これらを捨てる事で得られるからであり、さらにモクシャのハウスにあたる。つまりは、物質的な執着を全て捨てることが必要となる。つまり、悟りを開かなくてはならない。
悟りとは、いくら生まれ変わっても、どんなに世の中が進歩して暮らしが楽になっても、生まれ変わる限りは永遠に喜怒哀楽の流れにいるという事を心から理解する事が、悟りの一種なのだと思う。それはおそらくどんな占星術師も理解しているのではないだろうか。
ヴェーダでは、7割8割以上が宿命によって決まっているというが、10割全ての事が決まっているという占星術師もいる。つまりは、悟りを得るためには、何かしらのきっかけが必要なのだろうと感じる。続くと、ケートゥというのは業でもあるので、それが手放しの12ハウスにある事は、カルマの解消となるという事らしい。
また、ジャイミニ氏の文書によると、ナヴァムシャ(D9)にて、Ak(自身のカラカ)をラグナとした時、そこから4ハウスか、12ハウスにケートゥが在住するか、もしくはそれらのハウスの支配星と合すると、解脱の可能性を示すようです。また、Akから4番目か12番目のハウスが魚座であるならば、より一層解脱の可能性を高めるとの事です。
どのみち、輪廻転生がないとしても、死んでしまえば、全ての概念がなくなる、という事は、どんな風にあの世に行っても、後悔も何も感じないという事であり、コップに入った水は、いずれ水面から蒸発し、底まで順番に全てなくなってしまうのです。
しかし、輪廻転生があるとしたら、国籍や人種を超えて、また生まれ変わり、同じようなことに悩み、または別のことに悩み、不安になり、幸せを感じながら、同じように巡る四季と運気を味わいながら、解脱を示すクンダリに生まれ変わる時まで過ごすのでしょうか。
輪廻転生を信じるも信じないも、不平等であり、それはこの世のように現実的であり、残酷なリアリズムであり、ある意味平等とも思えます。
ある意味、輪廻転生とは、本人の努力ではなく、生まれ持った宿命であり、輪廻転生があるとすれば、それはコップの上にある水が先に蒸発するように、ただ、人それぞれがそれを待って列をなしている、解放の順番待っているのが、今の世の中である気がします。